以前「苦」を滅する方法を紹介したが、凡そ苦しみや悩みというものは全て自分が作り出しているものである。しかしながら、その苦しみがどのように生じ、どのような構造をしているかを知らないことには、それを扱うのは容易ではない。それを現代的な表現を用いてわかりやすく説明しているのが本書である。
本書によれば、悩みというのは潜在意識内の自我=エゴによって生じるという。エゴは物や概念が所有という感覚により自己のアイデンティティと同一化された時に形成される。そして、その同一化した物や概念が傷付けられたりそれを失ったりすることでアイデンティティが損なわれると感じた場合、エゴが顕在化して、不快な感情や怒りの感情などとして現れ、我々に苦しみをもたらす。エゴは後天的環境で生み出される思考の作用である。思考=エゴが活動すると純粋意識が阻害されて人間本来の物事の捉え方ができなくなり、日々の生き方及び人生の考え方などに重大な障害をもたらす。犯罪・破滅的な一生・暴力、これらは全てエゴのもたらす弊害である。エゴはさらに発展して集団的暴力・紛争などを引き起こす。
エゴはまた状況の不満からも生じる。しかし、その状況(得てして苦境)はただ苦しみを与えるためだけに起きるのではなく、エゴを気付かせるために起きるから、避けるのではなく受け入れることが重要であると説く。
それでは、 エゴを取り除けばよいではないかと思われるかもしれない。しかし、エゴは幼少期からの環境(親や学校、社会など)で形成されるため、潜在意識に深く厚く培われており、その当人が気付かない事が多い。また、エゴは往々にして過去のトラウマと強く結びついているから、その除去は容易ではない。
では、エゴに対処する方法は全くないのか。いいや、エゴを克服するにはエゴに気付けばいいのだ。エゴは無意識の作用だから気付くと存続できないからだ。冒頭で述べた通り、結局エゴもその結果の苦しみも自分が作り出しているので、きちんと対処すれば取り除くことは可能であり、そうすれば心の平穏も訪れるのである。その詳細をここで書きつくすことはできない。だから、興味のある人は実際に本を手に取って頂きたい。私も本書で考え方が変わった一人である。
本書は少々表現がきつく感じられるかもしれないが、その遠慮のない書き方がかえって目覚めが近い人と目覚めた人の胸の奥を刺激するはずだ。その意味で魂のチャートで述べた成人期後期及び老年期の人向けの本といえる。


ニュー・アース -意識が変わる 世界が変わる-
エックハルト・トール
サンマーク出版
2008-10-17